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Q. DR.DAC3はどれくらいの制作期間がかかりましたか?
A. 企画は2年前からスタートして、本格的な製品開発期間は約1年くらいです。
Q. 全世界から多くの期待を寄せられたのではないでしょうか? どんな意見や要望がありましたか?
A. 音質的には多くのユーザーの方々から、歴代のDR.DAC2のクオリティに大変満足いただいておりましたが、USBの最大帯域幅が24bit/96kHzと制限があったため、24bit/192kHzの高音質音源の再生ができない不満の声もありました。また、USB High-Speed アシンクロナスタイプへの要求もありました。
Q. 今回の後継機開発に当たって、最初にスタートした時のアイデアがあれば教えてください。
A. 開発当初はシンプルに、上記の要件を満たすことだけを前提に開発を始めました。
Q. 最終的にはどういう点に重点をおいて制作されたのですか?
A. AUDIOTRAKの製品は、スペックではなく音質に焦点を当て、コストパフォーマンスに優れた製品としてリリースしてきました。今回のDR.DAC3は、ユーザーの方々のご要望を取り入れ、最高級のパーツを搭載し、最高のスペックとクオリティを実現しつつ、適正な価格であることに焦点を置いて、開発を完了しました。
Q. 開発に当たって難しかったことはありますか?
A. 歴代のDR.DAC2のクオリティがあまりにも良かったので、音質的に大幅に飛躍し、確実なアップグレードと感じてもらえるためのチューニングの過程がとても大変でした。
Q. 前作のDR.DAC2シリーズからの改良点を教えてください。
A. わかりやすいスペック上での変更は、USBコントローラがTENOR社の「TE7022 Full-Speed(12MHz) Adaptive mode 24/96」からVIA社の「VT1731(最大32bit/384kHz対応) High-Speed(480MHz) Asynchronous 24/192」に変更し、音質的な核心部品であるDAコンバータをTi社「PCM1798(123dB)」から、現存するDACの中で最高スペックである「PCM1794(129dB)」に変更しました。そしてDr.DAC2シリーズは、ヘッドフォン駆動用にTRバッファOPAMPの組み合わせで構成していましたが、DR.DAC3はクオリティに定評のあるヘッドフォン専用チップ「TPA6120A2」を採用しています。また、デジタル入力はUSB / 光 / コアキシャルの三つの選択ができるようになり、Dr.DAC2シリーズでS/PDIF入力のソース切り替えが出来かった点を改善しています。さらに、Windows OS(※1)では、サウンドエフェクターである「Qsound」に対応し、マルチチャンネルデジタルAV出力用として「AC3-pass through」機能を追加しました。その他にはアップグレードされたOPAMPと、寿命が長く優れた性能のソリッドタイプのコンデンサを新しく採用しています。
Q. 内部構造が大幅に変更されているように見えますが、苦労されたのでは?
A. 前述の改善点でご覧になったように、実際には多くの部分の変更と改善を行いましたので、回路設計上の限られたエリア内で、ノイズの発生や干渉が起きないように、各パーツごとに分離して設計することが非常に困難でした。基本的な基盤デザインを大幅に変更した上で、歴代のDR.DAC2のクオリティから大幅に飛躍した音質を実現することは非常に大変でした。
Q. DAチップに「PCM1794」が使用されていますが、採用された理由を教えてください。
A. サウンド的な傾向やイメージを、歴代のシリーズと変えることなくクオリティアップを行いたかったので、同じTi社の最高スペックであるPCM1794(129dB)を採用しました。開発完了後、PCM1794を選択したことを満足に思っています。
Q. こだわりの箇所や、パーツなどを教えてください。
A. 改善点として最初に挙げた、「USBコントローラ」&「DAコンバータ」&「ヘッドフォン駆動回路」の組み合わせです。
Q. 理想の音に対して、どういう風にサウンドチューニングを行っていかれるのですか?
A. 最終的にはスピーカーやヘッドフォンを通し、人の耳で聞くことが一番重要ですが、制作段階においては優先的に耳ではなく、目で確認できる測定されたデータを元に適切なチューニングを行うときもあります。その次に、できる限り様々な環境での再生と、いろんな方の感想を集約し、生産直前までテストを繰り返しながら、より良い音質をチューニングします。一般的な事ですが、非常に重要になる部分です。
Q. 製品開発にあたって、基準とされているモニタリング環境を教えてください。
A. 最終的なヘッドフォンアンプとしての仕上がりには、SennheiserのHD650を基準として調整しました。ライン出力に関しては、世界各国で様々なアンプやスピーカーの傾向があるので、非常に難しかったです。今回はブックシェルタイプを中心にいろんなスピーカーを試しました。
Q. 本機はヘッドフォンアンプとしても高く評価されていますが、相性の良いヘッドフォン、イヤフォンがあれば教えてください。
A. 一般的ですが、上記に挙げたHD650の他にも、AKGのK701やSonyのMDR-1Rなどでもハッキリとした音の変化や、グレードアップしたサウンドを感じていただけると思います。Beatsなどは、ヘッドフォンの特長がさらにわかりやすくなって面白いかもしれません。イヤフォンはUltimate EarsのTriple,Fi 10で確認することもありますね。個人的にはSennheiserのIE80などは低音調整が可能なので、OPAMPの組み合わせと一緒に、いろいろと調節して楽しんでいます。
Q. 本機の特長として、OPAMPの交換があります。どのような目的で、ソケット式を採用されているのですか?
A. 本来はデフォルトで構成されたOPAMPの音色に満足していない方々のために、OPAMPを交換して、自分に合った音色に変えることができるようにするためです。ただし、歴代のシリーズを通して感じることは、満足していないから変更するという事よりも、変更するという楽しさに魅力を感じていただくユーザーの方も結構いるのではないでしょうか。
Q. OPAMPについて「NE5532」と「MUSES8920」が使用されていますが、採用された理由を教えてください。
A. 歴代の製品で採用され、相性の良かったOPAMPです。またDR.DAC3の聴音テストでも、バランスと音質が優れていたので採用しました。
Q. OPAMPの交換について、お勧めのOPAMPや組み合わせはありますか?
A. まずは、デフォルトで採用された構成を一番お勧めします。この音に慣れてから変更していただきたいと思っています。また、OPAMPの交換をご希望の場合は、無条件に高価な製品を使用するのではなく、自分の好きな音色をイメージして、どのような部分が不足しているかをまず把握し、適切な音色で、適切な価格のOPAMPに交換してほしいです。
Q. OPAMP交換を行うユーザーにアドバイスがあれば教えてください。
A. マニュアルに書いてある注意事項を必ず参考にすることをお願いいたします。特にOPAMPを逆さまに接続するとOPAMPと製品自体に致命的な欠陥が発生することがありますのでご注意ください。
Q. シリーズとして今回の出来栄えについてどう感じていらっしゃいますか?開発者として満足している点やもっとこだわりたいと思われる箇所はありますか?
A. 100%満足することはありませんが、願っていたクオリティの製品を発売することができて、それなりに満足しています。残念な部分は、USB機器としてPlug&Playの利便性が失われた事と、DSD機能への未対応の部分です。