AUDIOTRAKからDR.DACシリーズの第三作目の「DR.DAC3」が発表された。このシリーズは小型ヘッドフォンDACではベストセラーであり、私も愛用しているが、毎回性能や音質が改善されている。これは基本性能や音質を第一に設計されているので、いわゆるポタアンのカテゴリーではなく本格的なDACであると私は思っている。内部基板や回路を見てもこれだけの内容であれば電池では電圧や電流が足りないのでACアダプタ駆動となっているところを見てもうなずけるだろう。
外見上はDR.DAC3に変わってもあまり変化は見られない。天板のロゴやボリュームつまみぐらいしか違いがないように見えるが、これは今までのブランドイメージや評判を継承する意味で好ましいと思う。
スペック上はUSB入力が「96kHz/24bit」から「192kHz/24bit」にグレードアップされている。また一番の特徴として、DAコンバータチップが「PCM1798」から1ランク上の「PCM1794」に変わって、ダイナミックレンジが「123dB」から「129dB」と+6dB改善されている。たった6dB?と思うかもしれないがこれは今までの2倍の改善である。
外観上の変化は少ない、しかし中身は……
ここで少しdBという単位について説明してみよう。dBは「デシベル」と読むが、これはオーディオでは大変重要な単位であり、ダイナミックレンジ、SN比、増幅率などの単位に使われている。
今回のDR.DAC3の129dBは 123dB + 6dBであるので 1,410,000 x 2 = 2,820,000倍となる。282万倍である。24bitのデジタル信号の分解能は24bit、つまり2の24乗=約168万に対して十分な余裕があるということだ。DR.DAC3は真の24bitが出せるDACということである。
DR.DAC3で採用されているTI社の「PCM1794」は、2003年に開発されたDACで今では少し古い部類に入る。がしかし、まだこのスペックを超えるDACはない。今や32bitというスペックを持ったDACがあるが、これはデジタル信号のインターフェースが32bitまで対応しているという意味で最終アナログ信号の出力が32bitの分解能を持っているということではない。むしろもっと低い分解能の信号しか出てこないのだ。「PCM1794」は真の24bit分解能のアナログ信号を出すDACである。これを使いこなすにはDACチップの後のアナログ回路が重要になってくる。DR.DAC3ではこの部分に新日本無線のMUSE8920 OPAMPを採用しており、抜かりはない。
ヘッドフォンAMP部も改善されている。TI社の究極のヘッドフォンAMP専用IC「TA6120」が採用されている。このICは電流帰還型というものでスルーレートが大変優れている。つまり音のスピードが速いのだ。詳しくは本コラムの前の回に書いたので参考にしてほしい。 ※OPAMP道 第3回 / OPAMP道 第10回
音を聞いてみた。期待どおりだ! ダイナミックレンジの広がりが音楽の細部までルーペで拡大したように見える。また、ヘッドフォンICの変更による音の立ち上がりが快感である。
このDR.DAC3は見かけはポータブルであるが、内容はハイエンド機器に匹敵する。また機能やサウンドはリファレンスDACとしてのレベルに達しているので、この価格、47800円はまさにお買い得といえよう。
ちなみに、私がヘッドフォンアンプの評価に使うCDを紹介してみよう。
まず1970年代アメリカンロックの英雄オールマンブラザーズバンドのフィルモアイーストライブだ。これはデュアンオールマンとディッキーベッツのレスポールによるツインギターバトルが聴ける最高の録音だ。ストーミーマンデーのギターのイントロの箇所で、ドラムのスネアの裏のばねのさわりがアンプの音に共鳴してびりびり響く音が聞こえる。ライブならではの臨場感であるが、このノイズがギターの音と分離して聞こえるかどうかだ。普通のヘッドフォンAMPではこのノイズがギターの音にかぶってしまい、分けて聞くことはできない。これはかなり高度なシステムでないとわからない高度なチェックポイントだ。
外見上はDR.DAC3に変わってもあまり変化は見られない。天板のロゴやボリュームつまみぐらいしか違いがないように見えるが、これは今までのブランドイメージや評判を継承する意味で好ましいと思う。
スペック上はUSB入力が「96kHz/24bit」から「192kHz/24bit」にグレードアップされている。また一番の特徴として、DAコンバータチップが「PCM1798」から1ランク上の「PCM1794」に変わって、ダイナミックレンジが「123dB」から「129dB」と+6dB改善されている。たった6dB?と思うかもしれないがこれは今までの2倍の改善である。
▲(左)DR.DAC2 DX /(右)DR.DAC3
外観上の変化は少ない、しかし中身は……
0dBを1倍として基準にし、3dBで1.4倍、6dBで約2倍、10dBで約3.1倍、20dBで約10倍であることを覚えておこう。dBは足し算すると掛け算の結果になるようになっている。つまり6dB+20dB=26dBとなるがこれは 2倍x10倍=20倍である。つまり26dBは20倍となる。また20dB+20dB=40dBであるがこれは10倍x10倍=100倍、つまり40dBは100倍である。これを使えばどんなdB値でも組み合わせて計算して何倍かの見当はつくので関数電卓などの必要はないのだ。
これ以上覚える必要はない、あとは組み合わせの暗算で計算できる。
dBは人間の感覚の強弱と物理的な大小の比率の関係に似ているのでオーディオでは使いやすいのだ。
ではDR.DAC2シリーズの123dBは、上記から計算すると、123dB=20dB+20dB+20dB+20dB+20dB+20dB+3dBであるので 10x10x10x10x10x10x1.41 =1,410,000倍となる。つまり信号の最大値は最小値の141万倍であるということなのだ。つまり一番小さい音は最大の音の141万分の1であるということでもある。これ以上覚える必要はない、あとは組み合わせの暗算で計算できる。
dBは人間の感覚の強弱と物理的な大小の比率の関係に似ているのでオーディオでは使いやすいのだ。
今回のDR.DAC3の129dBは 123dB + 6dBであるので 1,410,000 x 2 = 2,820,000倍となる。282万倍である。24bitのデジタル信号の分解能は24bit、つまり2の24乗=約168万に対して十分な余裕があるということだ。DR.DAC3は真の24bitが出せるDACということである。
DR.DAC3で採用されているTI社の「PCM1794」は、2003年に開発されたDACで今では少し古い部類に入る。がしかし、まだこのスペックを超えるDACはない。今や32bitというスペックを持ったDACがあるが、これはデジタル信号のインターフェースが32bitまで対応しているという意味で最終アナログ信号の出力が32bitの分解能を持っているということではない。むしろもっと低い分解能の信号しか出てこないのだ。「PCM1794」は真の24bit分解能のアナログ信号を出すDACである。これを使いこなすにはDACチップの後のアナログ回路が重要になってくる。DR.DAC3ではこの部分に新日本無線のMUSE8920 OPAMPを採用しており、抜かりはない。
ヘッドフォンAMP部も改善されている。TI社の究極のヘッドフォンAMP専用IC「TA6120」が採用されている。このICは電流帰還型というものでスルーレートが大変優れている。つまり音のスピードが速いのだ。詳しくは本コラムの前の回に書いたので参考にしてほしい。 ※OPAMP道 第3回 / OPAMP道 第10回
音を聞いてみた。期待どおりだ! ダイナミックレンジの広がりが音楽の細部までルーペで拡大したように見える。また、ヘッドフォンICの変更による音の立ち上がりが快感である。
このDR.DAC3は見かけはポータブルであるが、内容はハイエンド機器に匹敵する。また機能やサウンドはリファレンスDACとしてのレベルに達しているので、この価格、47800円はまさにお買い得といえよう。
ちなみに、私がヘッドフォンアンプの評価に使うCDを紹介してみよう。
まず1970年代アメリカンロックの英雄オールマンブラザーズバンドのフィルモアイーストライブだ。これはデュアンオールマンとディッキーベッツのレスポールによるツインギターバトルが聴ける最高の録音だ。ストーミーマンデーのギターのイントロの箇所で、ドラムのスネアの裏のばねのさわりがアンプの音に共鳴してびりびり響く音が聞こえる。ライブならではの臨場感であるが、このノイズがギターの音と分離して聞こえるかどうかだ。普通のヘッドフォンAMPではこのノイズがギターの音にかぶってしまい、分けて聞くことはできない。これはかなり高度なシステムでないとわからない高度なチェックポイントだ。
オールマンブラザーズバンド
フィルモアイーストライブ
この不良感がたまらない魅力だ!
音楽は高度なROCK+BLUES+JAZZ
デュアンのスライドギターは天空を駆け巡りディッキーは歌う!
つぎはニールヤングのハーベスト。この中のハートオブゴールドはニールヤングの代表曲で、シンプルだが力強く、ちょっとルーズな演奏がたまらない!ハーモニカと唄が大変よくミックスされて、だれでも弾き語りしてみたくなる名曲だ。この曲のイントロで左のほうにサイドギターが1弦の12フレットのハーモニックスを弾くところがある。これがきれいに聴こえるかどうかでヘッドフォンアンプの良し悪しが判定できる。このチェックポイントは上記のオールマンブラザーズよりはわかりやすいだろう。
フィルモアイーストライブ
この不良感がたまらない魅力だ!
音楽は高度なROCK+BLUES+JAZZ
デュアンのスライドギターは天空を駆け巡りディッキーは歌う!
ニールヤング
ハーベスト
鼻に詰まった高い声で歌う、これがニールの魅力。
実際に自分で歌ってみるとこれがなかなか難しい。
機会があれば、みなさんもこれらの音源を使って聞いてみてください。音を聞いた時の全体的なイメージで判断するのもよいが、こういった自分なりの分析的アプローチでの評価方法を持ってみるのも悪くないだろう。こういったチェック方法は他にもたくさんあるので、またいつか紹介したい。
ハーベスト
鼻に詰まった高い声で歌う、これがニールの魅力。
実際に自分で歌ってみるとこれがなかなか難しい。
米国テキサス州の半導体会社にて長年デジタルAVのLSIの企画開発やマーケティングを担当。はじめて使ったオペアンプはRC4558で、学生時代のエレキギターエフェクターは自作だった。アナログからデジタルまでの幅広い知識と経験を生かし、現在は各種オーディオコンサルティングやアンプの設計製作に専念。ハンドメイドオーディオ工房"オーロラサウンド"所属。趣味はギター演奏。